羽生結弦の心に火をつけた「衝撃」。チャンとの戦いで手にした収穫とは (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●写真 photo by Noto Sunao(a presto)

 しかし、2戦目となった11月のフランス大会は納得の滑り出し。公式練習からキレのいい動きで、夕方からのSPでもその好調を維持した。

「SP最初の4回転トーループは、自分としては納得できるジャンプではなかった」と本人は満足していなかったが、着氷で少し重心の位置がずれたとはいえ、審判の出来栄え点(GOE)は2.00点が出る高評価。その後の要素も、すべて加点をもらう出来で当時の自己最高となる95.37点を獲得した。

 前年のシーズン序盤、羽生はSPで歴代最高点を連発しながらも、年が明けてからはミスが続いた。それをこのシーズン、やっと完璧に近い形でできた手応えがあった。だが羽生は、「体もすごく動いていると思うし、スケーティングも頑張ってやってきた。それなのに前年の最高点を0.03点しか上回っていないのは残念。もう少し頑張らなければいけない」と悔しがった。

 そして、羽生以上の出来を見せていたのが、世界選手権を3連覇中だったチャンだった。このフランス大会で、冒頭の4回転トーループ+3回転トーループからすべてのジャンプと演技を完璧に決め、技術点こそ羽生を0.38点下回ったが、芸術要素点で上回って98.52点の世界歴代最高点(当時)を記録したのだ。

 SPが終わって、羽生とチャンの差は3.15点。

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