「髙橋大輔が五輪に連れて行ってくれた」―振付師・宮本賢二が語る秘話

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●写真 photo by Noto Sunao(a presto)

 フィギュアスケートファンなら誰もがあるお気に入りのプログラム。ときにはそれが人生を変えることも――そんな素敵なプログラムを、「この人」が教えてくれた。

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宮本賢二
『eye』髙橋大輔

髙橋大輔のショートプログラム『eye』の演技髙橋大輔のショートプログラム『eye』の演技 バンクーバー五輪の髙橋大輔選手のショートプログラム『eye』がお気に入りのプログラムです。自分は選手としてオリンピックに行くことはできませんでしたが、髙橋大輔というすばらしいスケーターが、自分の作ったプログラムをオリンピックに連れて行ってくれた。髙橋選手本人が僕を振付師に選んでくれたこともうれしいことでした。プログラムの内容もすばらしかったと思っています。

 最初の選曲の時に、髙橋選手から「Cobaさんが作った曲で滑りたい曲があるんですけど、曲名がわからない」というリクエストがありました。僕もCobaさんの曲で好きな曲があったので、本人のところに20曲くらい持って行きました。1曲目にこの『eye』を聴かせ時に、髙橋選手のほうから「滑りたかったのはこの曲です」と。2人が好きな音楽が一緒だったので「これは運命かもしれない」と思いました。

『eye』の振り付けのこだわりとしては、常に彼の動きに刺激があるようにしました。もちろん、髙橋選手からも、「ここはもう少しこう動ける」「ここはもう少しシンプルな動きにしてほしい」といろいろな意見が出て、お互いに意見を出し合って作り上げたものです。長光歌子コーチにも助言をもらいました。

 どこが気に入っているかと聞かれても、答えるのはなかなか難しいです。なぜなら、作品全体が好きだからです。強いて挙げれば、2つめのサーキュラーステップの入りで爆発的に跳ぶ箇所があるのですが、そこは髙橋選手と一緒に、「こういう動きはできないかな」と、話し合って振り付けた動きで、それがすごく音にはまりました。

 また、プログラム最初の振り向く部分も好きです。本当はなくてもいい動きをちょっと入れてみたり、そういうところが好きなんです。もちろん、彼の動き方、踊り方が大好きだということもあります。この『eye』は、髙橋選手の意見もこだわりもたっぷり入っているプログラムです。

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