村上佳菜子がソチで震えたコストナーの演技。滲み出る「色気と人柄」 (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • photo by JMPA

 ひとつは世界ジュニア選手権で優勝した時のショートプログラム(SP)『ネクター・フラメンコ』で、真っ白い衣装で演技しました。フラメンコの先生と(樋口)美穂子先生と一緒に、一から振り付けたものです。曲中に足音や手を叩く音が入っていますが、あれはフラメンコの先生が実際に踊っている音なんです。初めてクリエイティブな部分に刺激を与えられたプログラムでした。

 2つ目が『バイオリン・ミューズ』です。コンテンポラリーダンスの平山素子先生に振り付けてもらったプログラムで、表現の部分をすごく刺激されるきっかけになった曲です。

 そして3つ目は、現役最後のプログラムとなった『トスカ』です。私のスケート人生の集大成だったと思いますし、滑っている感覚は今でも忘れないです。私にとって本当に現役最後のプログラムだから大切な曲です。

 2009-2010シーズンの『フラメンコ』の真っ白い衣装は、フラメンコの先生から薦められて決めたのですが、伸びない生地だったんです。当時、私は中学3年で、少しずつ身長が伸びていて、シーズン後半になると衣装がちょっときつくなってきました。ある日、私がその衣装を着ると、いつもと違うんです。「あれっ、(衣装の生地が)伸びてる」と母に言ったら、「それ、先生がさっき着てくれたから」と言ったんです(笑)。衣装の生地を伸ばすために、(山田)満知子先生が着てくださったんです。これはいい思い出になっています。

 私にとってのプログラムは、眠っている感性を引き出せる瞬間だと思います。普通に生活している時は出せない、奥にある感性を表に出す時間です。それを自分が滑っていて感じます。私は普通に生きているので、たぶんそれほど情熱的じゃないし、長いものに巻かれるタイプなんです(笑)。それでも、プログラムを滑る瞬間は、何にも代えられない気持ち良さがあります。

 いつも笑顔で元気がいいと言われますけど、滑る時の私が、暗い曲や強い曲のほうが得意だというのは、やはり眠っている自分の感性があって、実は暗いとか強いとか、そちらなんだろうということを感じます。

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