八木沼純子はフィギュアの奥深さを14歳で知った。見惚れた女王の演技 (4ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • photo by AFLO

 曲やストーリーを解釈して、どう表現すればいいのかを掘り下げながら演じ、自分自身がカルメンになるために、カルメンとしてどう発言するかまでも作り込んでいたのではないかと感じてしまう彼女の『カルメン』は、強烈でした。

 カタリーナ・ヴィット選手は、勝つために強くあらねばならず、常にそう育てられてきたのではないかと思います。

 当時、東ドイツやソビエト連邦といった共産圏の国では、国がサポートして選手を育成し、五輪や世界選手権で金メダルを取ることを目的として育て上げられてきた選手が多かったのではないでしょうか。いかに強い自分でいるか、試合で勝つためにどう強くあるべきかを、幼少の頃から叩き込まれていた人たちではないかな、と。大事な場面でいかに実力を発揮していくかという観点が、他の国の選手とはまた違ったと思います。

 勝つという目的を達成するために、いろいろなものを犠牲にしてきたかもしれません。ですが、自分の個性をわかっていて、それを最大限発揮して体現できるスケーターのひとりだったと思います。彼女が滑っているだけでスポットライトがずっと当たっているような、華やかなオーラをまとっていた。私の中ではそう見えていました。

 カルガリー五輪では、公式練習が一緒だったヴィットさんばかり見ていて、先生に怒られたほどです。サラエボとカルガリーでオリンピック2連覇し、世界選手権でも4度タイトルに輝き、すばらしい成績を残しています。

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