羽生結弦はチェンとの死闘でまた一歩
強くなった。目指すべき道が明確に

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

「こんなものだろうとは思っていましたが、実のある試合はできました。ネイサン(・チェン)選手がああいうすばらしい演技をしていなかったら、僕もこうはなっていなかったと思います。SPのミスがあったからこそ、今日のフリーの挑戦だったのですが、いろいろ考えさせられたし、必要なものも見えてきました。世界選手権のときは『かなわないな。もっと強くならなきゃ』と笑えていたけれども、今日は勝負には負けても、自分の中の勝負にはある程度勝てた。だから、試合としては一歩強くなったんじゃないかと思います」

 世界最高の335.30点にしたチェンには、43.87点差をつけられる完敗だった。だが、その点差ほどには力の差は感じていない、とも羽生は話した。これは、トリプルアクセルが1本も入っていないうえでの結果なのだ。

「この構成をしっかり決めて、SPももうちょっとだけしっかり決めていれば勝負になると思いました。それを試合でコンスタントにできるようにするには相当な努力が必要だけれども、たぶんそれはネイサン選手もたどってきた大変な道だと思います。それを少しでも最短でたどり着けるように練習しなきゃ、と思いました」

 そう言って、羽生は笑顔を見せた。

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