宮原知子はリンクで気品が滲む稀代のスケーター。「前を向いています」 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 一時代を支えてきた宮原は、今も弛むことなく競技に挑み続ける。2019-20シーズンは、濱田美栄コーチだけでなくカナダにも拠点を置き、リー・バーケルコーチの指導も受けるようになった。

「新しい気持ちでスケートに臨めています」

 宮原は言う。

 一方、世界ではロシア勢を中心に女子でも「4回転時代」が開幕した。運動能力がモノをいう。その流れは容赦がない。

 芸術性は劣勢だ。彼女は、時代の波に抗えるのか?

 2019年12月の全日本選手権、宮原はショートプログラムで70.11点を叩き出し、2位で好スタートを切った。1位の紀平梨花とは3.17点差。背中が見えている状況だった。

「焦らずに。本番で、タイミングが早くなるクセがある」

 リーコーチからはそう諭されていた。

 そして迎えたフリーだった。宮原は映画『シンドラーのリスト』のメインテーマを使用。「絶望のなかでも生きる輝きを表現する」。映画の世界観を氷の上で体現できるのは、宮原だけのはずだった。

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