宇野昌磨は楽しみながら強くなる。ランビエルが語った復活の真実 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 流ちょうな英語でそう答えるランビエルは、Enjoy(楽しむ)という単語を強調していた。そして、Confidence(自信)という言葉も使った。

「私はラッキーでした。昌磨の周りにいる人々が、コーチとして仕事をするための環境をつくってくれたのです。そのおかげで、短い時間で成果を出せました。昌磨が自信を取り戻す、そのためのトレーニングが十分にできるようになった。それが(優勝に至った)真実です」

 ランビエルは、宇野がリンクで自信を取り戻し、滑ることを楽しめるようになれば、自ずと結果は出ると信じていた。たとえ全日本で順位が悪くても、復活の足掛かりになるはずだと。その信頼は、宇野の不安を打ち払った。彼なくして、この復活劇はない。

 しかし、あくまで主役は宇野だ。

「ステファン(・ランビエル)のおかげで楽しめるようになりました」

 宇野はこともなげに言う。しかし、楽しむことは楽をすることではない。むしろ、厳しさと対峙することだ。

 宇野昌磨、22歳の全日本王者の実像とは――。

 2019-20シーズン、宇野は苦しみ抜いている。コーチ不在でスタートせざるを得なくなって、自分の滑りを狂わせていった。練習でも迷いが増幅し、ジャンプが決まらなくなっていた。

 そしてグランプリシリーズ初戦、フランス杯でジャンプの転倒が相次ぎ、8位に低迷。シニア転向後、最低の結果だった。グランプリファイナル出場の望みも事実上、消えた。

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