17歳・紀平梨花が目指す完全無欠。自分に勝てば、誰にも負けない (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Noto Sunao(a presto)

 じつは、全日本のフリーではライバルたちの得点が伸びず、紀平はたとえ4回転を跳んで失敗しても、優勝する公算が高かった。しかし、彼女は自らの判断で回避した。完璧な演技を目指し、石橋を叩いて渡った。

 そして、ノーミスのフリーを体現している。

 幻想的な曲「International Angel of Peace」が静かに鳴って、プログラム最初の3回転サルコウを決めた。高得点が出るトリプルアクセルと3回転トーループの連続ジャンプも成功。そこから曲調が変わって、3回転フリップ、トリプルアクセルでもきれいに着氷した。ステップでも、難易度の高いターンなどを確実にやってのけ、3回転フリップ+2回転トーループ、ダブルアクセル+2回転トーループ+2回転ループ、最後の3回転ループとあらゆるジャンプをそろえた。

 フリーの155.22点は2位以下を大きく引き離す、独走優勝だった。

 紀平のスケーターとしての才能は、基本的な身体能力の高さに基づくと言われる。体幹が強く、跳躍に優れ、体がしなやか。なにより、下半身が強く、倒れかけても踏ん張りがきく。ジャンプで回転不足を取られることがほぼなく、転倒も少なく、リカバリーができる。

 しかし、紀平は自身のフィジカル能力に胡坐をかいていない。一つひとつの技に向き合う。そうしたたゆまぬ心が、日本で群を抜いた存在になっている理由だ。

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