17歳・紀平梨花が目指す完全無欠。自分に勝てば、誰にも負けない (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Noto Sunao(a presto)

 彼女は完全無欠を求めていた。

 そして2020年2月の四大陸選手権、紀平は3回転ルッツを取り戻し、232.34点で優勝を飾っている。ルッツは最初、2回転を1日1本、丁寧に練習してきた。電気治療やアイシングをこまめに行ないながら、回数を1日3本に増やし、その精度を高め、成功確率を上げた。その後のオランダでのチャレンジカップでは、ルッツを入れたフリーで自己最高点をたたき出し、さらに完成度を高めている。

「4回転は入れたいですが、絶対に跳べるって思った時にしか入れたくない」

 紀平はそう言って、高みを目指し続ける。ロシアの新星、アリョーナ・コストルナヤ、アンナ・シェルバコワ、アレクサンドラ・トゥルソワの3人への対抗心はあるだろう。しかし、単純な負けず嫌いなのか。

「順位よりも、自分の演技をしたい」

 彼女は毅然として言う。自分のスケーティングの追求が、紀平を最強に近づけているのだ。
 
「ショートもフリーも、ノーミスで」

 大会に臨む紀平は、決まってそう言う。誰かとの戦いよりも、自分との対決。自分に勝てば、誰にも負けない。それは簡単そうに聞こえるが、常に己を上回るのは労苦だ。

 2018-19シーズンはシニア1年目で、トリプルアクセルを武器に浅田真央以来のグランプリファイナルを制覇した。その記録をさらに超えていくのは、容易ではない。その後の全日本や世界選手権は重圧もあったのか、苦戦を強いられた。それでも難易度の高いプログラムに挑み、自己ベストを更新し、細かいスピンやステップの技量も高めてきた。

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