SP首位。羽生結弦は2年ぶりでも「自分の体が覚えている」と信じていた (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 羽生は平昌五輪の前のシーズンに『レッツ・ゴー・クレイジー』と『ホープ&レガシー』を演じた時には、「ミュージシャンのライブのように、その時々に感じている感情や思いを乗せて滑る、その時だけの一期一会のような演技をしたい」と話していた。そういう面では今回の『バラード第1番ト短調』も、五輪後に経験した気持ちの揺れも含め、そのすべての要素が積み上げられた今だからできる演技だったのだろう。

 フリーへ向けて羽生は「今日バラード第1番をやってみて思いましたが、『SEIMEI』もやっぱり違うものになると思っています。やっぱりあのころとは経験値が違いますし、音の感じ方とか間の取り方とか...、あとはどういう風に表現していくかというのも全然違うので。だからまた違ったものにしたいなという気持ちでいます」と話す。

 今回、バラード第1番を滑り「やっと自分にストンと戻ってきた感じがする」と話した羽生は、「ワインやチーズと同じで滑れば滑るほど、時間をかければかけるほど熟成して、いろんな深みが出るプログラムだなと思った」とも言う。そう話しながら見せていた、自分の世界にやっと戻ってきた安堵感をうかがわせるような笑みが印象的だった。

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