2020.02.09

SP首位。羽生結弦は2年ぶりでも「自分の体が覚えている」と信じていた

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 最初の4回転サルコウは昼の公式練習の曲かけでは転倒し、直前の6分間練習でも一度きれいに決めたあとにパンクして2回転。終了46秒前に再度挑戦して成功させたように、若干の不安もあった。だが本番ではきれいに決めた。羽生は「やっぱり何か、本番になったらたぶん、音と跳べるフォームを一緒に記憶しているんだなという風に思って。とにかく自分は曲もプログラムも信じて跳んだというのが大きいと思います」と話した。

 自分のジャンプを信じて跳んだという言葉は、平昌五輪のSPのあとにも口にしていた。ギリギリの状態で何とか間に合わせた大会では、冷静過ぎるほど冷静に、無駄が一切ないシンプルな動きできれいなジャンプをすべて決めていた。その時は「もう何年も付き合ってきたジャンプだからこそ、自分の体が覚えていると信じていた」と話していた羽生。その時とは違い、今回はジャンプだけではなくプログラムそのものも信じていたのだ。

「平昌と今回は少し違っていますね。平昌の方がもうちょっと(点数を)狙っていたかもしれない。やっぱり後半に4回転+3回転があるというので、スピンはちょっと回転速度も遅くしたりして、目が回り過ぎないようにとかいろいろコントロールしていたんですけど、今回は後半がトリプルアクセルだけなので、思い切って全部をできているというか。これはアイスショーではできないですし。競技プログラムとして競技をやっている中でこれをできるというのは、本当に幸せだなと思います」

 こう話す羽生のジャンプは完璧だった。静かな流れの中で跳んだ最初の4回転サルコウは、9人のジャッジの5人がGOE(出来ばえ)加点5を付けてほかは4で4.43点の加点。さらに音が高まったなかで力強さも見せながら跳んだ4回転トーループ+3回転トーループは4人が5点を付けて4.21点の加点にした。そして音が静まる中でフワッと軽やかに決めたトリプルアクセルは、6人が5点を付ける3.77点の加点と、3本とも完璧なジャンプ。さらにチェンジフットシットスピンも、めまぐるしく手の置き方を変えて表現力を存分に発揮する、羽生ならではと言えるスピードのある滑りだった。