鍵山優真と佐藤駿。日本フィギュア界新星の「ライバル物語」 (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 1月のユース五輪、3月は世界ジュニアの大舞台が待っているので、気を抜かずにもっともっと成長できたらいいなと思っています」

 ユース五輪と世界ジュニア選手権に加え、2月の四大陸選手権の代表にも選ばれた鍵山は、シーズン後半戦でのさらなる飛躍を誓った。

 鍵山のコーチである父の正和氏は、アルベールビルとリレハンメルの五輪代表。そんな父と歩むトップスケーターの道に入ったのは5歳の時だ。スケーティングの基本を徹底的に教えられたのだろう。ジャンプとスピンの軸にぶれがない。父譲りの膝と足首の柔らかさが強みになっており、4回転を含めたジャンプは回転速度があり、軽やかに流れるランディングにはキレがある。スピンも美しいポジションを作れる。気に入った曲が流れていると「自然と体が動いてしまう」と言うほど踊ることが好きで、音楽に合わせて表現できる能力の持ち主だ。試合や海外選手との対戦について「ワクワクする」と楽しめるメンタルの強さもある。

 一方、ジュニアGPファイナル王者の佐藤も、SP『ロシュフォールの恋人たち』では最後のジャンプに4回転トーループを完璧に決めて、初めての80点台となる82.68点で3位の好発進となった。だが、フリー『ロミオとジュリエット』では冒頭の4回転ルッツで転倒して163.82点の6位に沈み、合計246.50点の総合5位に終わった。

「4回転ルッツはミスしてしまったんですけど、ほかはきれいにまとめられてよかったです。悔しい部分もあるんですけど、最終グループで滑って戦える夢が叶って、とてもいい経験になったので、これからもっと頑張ろうと思いました」

 同じ仙台出身の羽生結弦に憧れて育ち、「羽生選手は神様で、駿のすべてのエレメンツ(技)のお手本です」(日下匡力コーチ)。偉大な先輩と同じリンクで5歳からスケートを始めたという佐藤は、ここ1年で急成長。4回転ルッツなど、複数の4回転ジャンプを跳べるようになった。得点源のトリプルアクセルは高くて幅があり、安定感も抜群だ。

 豊かな表現力とジャンプやスピンなどのエレメンツの美しさを持つ鍵山と、4種類の4回転ジャンプを習得してトリプルアクセルを武器にする佐藤。いまのところ、実力差はほとんどない。「五輪で金メダルを取ることが目標」と口を揃えるふたりが、これから紡ぎ出すライバル物語はどのようなものになるのだろうか。近い将来、羽生や宇野を脅かす存在になってもらいたいところだ。



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