全日本選手権を見て考える日本女子フィギュアスケートの現在地 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 宮原知子と坂本花織は、ジャンプに苦しんだ。宮原はSP2位発進だったが、最初の連続ジャンプと最後の3回転ループで回転不足を取られて、70.11点。フリーでは前半の連続ジャンプと中盤の3回転サルコウで回転不足を取られ、基礎点が1.1倍で得点源となる終盤のジャンプは、連続ジャンプ2本を含め、6本のジャンプのすべてで回転不足とダウングレードの判定となり、合計191.43点で4位に下げている。

 GPシリーズ初戦の中国杯ではSPとフリーで回転不足を5本取られながらも、211.18点で2位と踏ん張っていた。だが次のロステレコム杯から若干崩れ、今回はそれがさらに悪化している結果になってしまった。

 昨季全日本選手権を初制覇した坂本花織も、今季はジャンプで苦しむシーズンとなっている。SPはミスを最初の連続ジャンプの回転不足にとどめ、69.95点で3位。だがフリーでは回転不足4本とダウングレード1本、さらにエッジエラーもあって7本中6本のジャンプでミス。118.31点で合計188・26点。6位という結果になった。

 宮原は「練習ではできていたのに、なんで試合になるとできないのかなと思った。技術的には少しずつよくなっている感触はあるので、精神的な問題だと思う」と話す。ジャンプ自体は先シーズンより高さがなく、低くなっている印象もあるが、回転不足を取られていることで自信をなくし、無難にいこうとしているようにも見える。

 また坂本は、チームメイトの三原舞依が病気で休養している影響があるようだ。「近くで同じレベルの選手が練習していると、自分でも負けないようにしようと頑張れるが、今年はひとりでやっていかないといけない。今シーズンは練習が辛くなると止めてしまうという癖がついてしまっていて、それが大事なこの試合で出てしまった」と話す。自分でやり切ったと思える練習ができていない不安が、勢いを欠いたジャンプになってしまっているのだろう。

 宮原と坂本は昨季から表現もこれまで以上に意識するようになり、今季はさらに、つなぎも難しくしたプログラムに挑戦している。宮原は昨季より表現力が数段アップし、難しいプログラムを見事に表現している。また坂本もフリーでは「体をグニャグニャに使うので最初は筋肉痛になっていたし、終盤は駆け抜けるような曲調になるので体力がもたないくらいにきつい」と話していた。そんなプログラム全体への意識も高まったことで、ジャンプへの意識の比重がやや少なくなっているのかもしれない。

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