2019.12.29

髙橋大輔がシングルのフィナーレで示した、
あきらめずにやり続ける姿

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

「今までやってきたなかでも、本当にふがいない演技をしてしまって。応援してきてくれたファンの方に申し訳ないし、なにより自分も悔しい。昔だったら、そんな自分が許せないと思いますが。技術的に、もう時代についていけていなくて。それに、次(のアイスダンス)に向かうところだったり、(故障などで調整がうまくいかず)いろんな気持ちのなかで滑ってきて、自分をコントロールしきれなかった」

 髙橋はそう言って、悔しさを口にしている。勝利の可能性を最後まで探っていたからこそ、もどかしさも募った。

「情けない」

 髙橋はその一言で集約した。

 しかし最後の舞台、彼は単純な勝ち負けを超越していたのだ。

「全日本は、初めて優勝したのが14年前(2005年)で。その頃は、14年後に自分がここでまだ滑っているなんて、少しも想像もしなかった。全日本は思い入れのある大会で、14年間で1度か、2度か出ていないだけで......。あ、忘れていました! 引退していたんだ!」

 髙橋は、泣き声を笑い声に変えて言った。その緩急が、自然体の彼らしい。

―シングルスケートは何を与えてくれましたか?

 そこで放たれた質問に、髙橋は顔をほころばせながら、少し困ったように言葉を探している。

「えっ、難しいな。自分はシングルしかしてきてないから......。少なくとも、シングルがなかったら、今の僕はなかったと思います。自分はこういう時代に生まれて、恵まれていました。もし女子だったら、トップに行けていなかったかもしれません。出会いを与えてもらったし、人生を豊かにしてくれました。シングルに出会えて幸せ者だなって......。ありきたりの答えですいません」

 彼は申し訳なさそうにしたが、十分な答えだった。

 最後の演技後、髙橋が浴びた歓声と拍手は、彼のスケート人生を象徴していた。祝福の嵐だった。その温かい空気は、目の前の演技だけに向けられたものではない。フィギュアスケート男子の世界を切り開いてきた人生への敬意を捧げていた。記録以上に、記憶に残る祝祭だったのだ。