全日本で予想外の結末も、羽生結弦の真の強さは「こんなもんじゃねえぞ」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 こう話しながら、気持ちと言動がまだ乖離しているみたいだと、羽生は苦笑しながら話した。

 同時に、こうも語った。

「何かイメージと自分の体のキレみたいなものが今回は分離していて。体力的にはショートだったら何とかなったかもしれないけど、フリーはどうしようもないところが出てしまった。はっきり言ってしまえば、競泳の選手はひとつの大会で何種目もやるわけですから。内容は違うかもしれないけど、そういうのに比べると僕は5週間で3回しか試合をやっていない。それでこのくらいの体力しかないと思うと、自分が(余分な)力を使ってジャンプを跳んでいるんだなというのと、もっと力を抜いて自分らしいいいジャンプが跳べるようにしなければいけないなというのを、今は考えています」

 そんな言葉に、羽生の矜持も感じる。そして、宇野の優勝についてはこう述べている。

「昌磨が辛そうなのを見ていたので、それがやっと落ち着いてスケートに集中できているなと思うと、やっぱりうれしいです。これまで3年間僕が出ていなかったけど、たぶんこれで昌磨も胸を張って全日本王者と言えると思う。彼は平昌五輪の銀メダルも予想以上の結果だとも言っていたけど、彼のいろんなものを含めた昌磨の強さの結果だと思うので。僕もしんどいことはたくさんあるけど、『こんなもんじゃねえぞ』って。これから頑張ります」

 羽生の言葉が、自分自身への宣戦布告であるかのように会見場に響いた。

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