新女王・紀平梨花が世界を狙うために次に考えていることは何か (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

「4回転サルコウを入れるかどうか、6分間練習まで迷っていましたが」

 紀平はそう言って、こう続けた。

「6分間で、トリプルアクセルの調子が悪かったので、アクセルに時間かけたくて。4回転を跳ぶ時間がなかったです。そこで4回転は入れないことにして。その代わり、(高得点になる)トリプルアクセル+3回転トーループを入れたいって思いました」

 そして会場では波乱が起きていた。SP2位の宮原、3位の坂本が相次いで点数を出せず、紀平の番になった。優勝条件は下がって、4回転を入れられる余裕が出た。

「ちょっと前に、(滑った)ふたりがいつもの歓声とは違っていたので、動揺したところはあったんですけど。自分は集中して、(演技を最後まで)あきらめずにやろうとだけ考えて。周りの声や音に惑わされないように。1位になる点数は下がったので、ちょっと(4回転を)やりたいな、という気持ちも出ました。でも、決めたことは決めたこと。変更すると、またミスが出るし、自信がある構成で最高の演技をするべきだと思いました。急に考えを変えたりすると、どうなるかわからない」

 そして、紀平は高い精度の演技を見せた。冒頭の3回転サルコウを決めると、伝家の宝刀とも言えるトリプルアクセルと3回転トーループの連続ジャンプも成功。そして3回転フリップ、トリプルアクセル、3回転フリップ+2回転トーループ、ダブルアクセル+2回転トーループ+2回転ループ、最後の3回転ループとすべてのジャンプをきれいに降りた。ジャンプだけでなく、スケーティングスキルなども高得点で、芸術性も高かった。

 155.22点は2位以下を引き離してのトップで、独走に近い形で優勝を決めた。

「(全日本は)まだ優勝していない大会で、ひとつも(ミスして)外したくなかった」

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