新女王・紀平梨花が世界を狙うために次に考えていることは何か

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

全日本選手権で初優勝した紀平梨花全日本選手権で初優勝した紀平梨花 紀平梨花(17歳)は大忙しだった。会場をどよめかせる高得点を叩き出し、全日本女王になった後、西へ東へ走り回っている。フラッシュインタビューを受け、表彰台に立って授賞式、再びテレビのインタビュー、さらに記者たちの囲み取材、そして公式記者会見に出席し、フォトセッションをこなし、記者からの質問を再び受けた。

 しかし新女王は澄ました表情で、少しも苦にならないようだった。

「あ、でも、爪が......」

 取材エリアで、首に下げた金メダルを手に持ってかざし、カメラに向かってポーズをとる時だった。そう呟いたと同時に、一度控え室に戻り、肌色の手袋をつけてきた。大胆だが、細心なのだろう。金メダルを顔の横にして、口の端を上げた。

「すごく調子は悪かったんですが、これはもう"爆笑しておこう"って思って。最後はポジティブに気持ちを持っていけたと思います。すごい不安で、ずっとビクビクして過ごしてたので、全日本優勝はすっごくうれしいです!」

 紀平は、素直に喜びを表現した。

 12月21日、代々木第一体育館。全日本選手権、女子フリースケーティングでショートプログラム首位の紀平は最終グループ、最後滑走だった。

 最終グループは6分間練習から、どこか不穏さを漂わせていた。宮原知子、坂本花織のジャンプがいまひとつ決まらない。全日本特有の緊張感なのか。紀平も、決して万全ではなかった。

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