宇野昌磨が取り戻した楽しむ気持ち。ランビエルと「一緒に戦っていきたい」 (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 後半、宇野は得意のクリムキンイーグルで会場を盛り上げると、トリプルアクセルも完璧に降りた。3.20点のGOE(出来ばえ点)をもらうほどだった。ドラムをたたくようなしぐさで、締めくくりに最大限に会場のボルテージを上げる。そして滑り終わった直後、右腕を振り下げ、ぴょんと跳ね上がった。喜びがありあまっていた。

 ショートは、105.71点の高得点で2位につけた。

「本当は、4T+2Tのところは、4T+3Tにもできたはずで。そこは逃げてしまった、というより、やってしまったな、という感じですかね。(そう思ったら演技中に)軽く笑いが出てしまいました」

 宇野は達観し、無邪気に滑りを楽しむことができていた。思わず、笑みが洩れるほどに。それは昨年の全日本のように、ケガを押しても全力で挑む苛烈な演技とは、少し別のものだった。苦難を乗り越え、一つの高みに達したのか。

「ステファン(・ランビエル)は試合よりも、日ごろの練習での存在が大きいかもしれません。スケートを楽しむ、という気持ちを僕に戻してくれた。コーチがこう言っているから、これをする、よりも、このコーチのために、一緒に戦っていきたい、という気持ちになっています」

 彼はそう心境を明かした。

 宇野は、多分に感覚的なところがある。それだけに、周囲の影響も受けやすい。感情量が巨大なため、もてあますところもあるが、気分がポジティブな方向に動くと、一気に好転するのだ。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る