2019.12.22

羽生結弦が全日本選手権で見せたプログラムへのこだわり

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

「トーループに不安があるというのではなく、あの曲でのトーループの不安があるという感じです。はっきり言ってしまえば、フリーの後半のトーループの方が簡単だなと思いながらやっていました。だったら基礎点的には0.57点くらい低くなるけど、その分をGOE、ジャンプの出来ばえをよくしたいなと。そうすればプログラム自体がもっと映えるかなと思ったのでそういう風にしました」

 1週間前にこの構成に変えることを決め、自分でつなぎなどの振り付けも考えたという『秋によせて』。変えたことでジャンプへの不安はなくなり、「できる」と思えるようになった。

 SP直前の6分間練習でも、早いうちにトリプルアクセルから4回転サルコウ、4回転トーループ+3回転トーループを力みなくきれいに決めると、スタートポジションから滑り出してコースや振り付けを確認しながら4回転サルコウを跳び、しばらく間をおいてからサルコウの位置から次のトーループの位置まで滑って単発の4回転を跳んでいた。無駄なエネルギー消費を抑えるような、冷静な練習だった。

「自分ではけっこうジャンプも跳んだと思うけど、最初の3分くらいで全ジャンプが決まったのでどうしようかなと思いました。オータムクラシックからNHK杯、ファイナルとやってきたなかで、6分間練習をどのくらいの体力の消耗の仕方で、どのくらいの調整で行くのがベストかというのが何となくわかってきているな、という感じがする。その時その時の体調によってわかってきているという感じがしますが、たぶんそれが試合勘というものだと思います。その点では、今の体に合った調整の仕方はできたんじゃないかなと思います」

 こう話す羽生は本番では、きっちりとGOE加点をもらうジャンプをした。最初の4回転サルコウは4.30点の加点で、2番目に持ってきた4回転トーループ+3回転トーループは4.34点の加点。3本目のトリプルアクセルこそ「自分ではミスだと思っている」と言うように、着氷で足が少しブレてしまって2.63点の加点にとどまったが、非公認ながら自身が持つSPの世界最高得点を上回る110.72点を獲得して首位スタートをした。

 さらに次のようにも語った。

「この曲では自分がアクセルの音として跳んでいるところは、やっぱりエッジ系のジャンプで軽やかな跳び方をしなければいけないというのを、表現的にすごく思っています。だからどうやってより軽くトーループを跳ぶかを考えました。『Origin』の後半の力強いトーループではなく、より軽い流れのあるトーループにするためにトーの付き方も意識して。そういう面では挑戦だったと思います」