本田真凜は全日本で殻を破ることができるか。「気持ちが大切」 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 本田は天才的な選手と言われてきた。感覚的と言うのか。誰よりも飲み込みが早かった。

 ジュニア1年目の2016年、世界ジュニア選手権でいきなり優勝している。2017年も、五輪女王になるアリーナ・ザギトワに敗れたものの、自己記録を更新して2位だった。同シーズンには、全日本選手権でジュニア選手ながら4位になっている。

「昔は、人が何回もやってできることを、自分の中で結構すぐにできてしまって」

 本田はそう言って、冷静に自分を見つめていた。

「でも、できるのがいいことではなくて。すぐにできるから、コツコツ習得した選手よりもジャンプが安定しない、というのがあって。今は体の成長とともに、"感覚的な部分の貯金はゼロ"と思ってトレーニングしています」

 2017-18シーズンにシニアデビュー後は、辛酸をなめることになった。平昌五輪出場を逃し、グランプリシリーズも不調。大きな失意を味わった。

 そこで、2018年4月から拠点をアメリカに移した。世界王者ネイサン・チェンも指導するラファエル・アルトゥニアンの教えを受ける。高校生の少女にとってホームシックがないはずはなかったが、スケートのために自らの生き方を決断した。

 その後も、万事順調というわけではない。

 2018-19シーズン、全日本では過去最低の15位だった。時差調整にも失敗。日本に戻ってから練習するリンクがなく、朝4時から1時間だけの練習で臨まざるを得なかったという。

「技術的な部分の準備なのか、気持ちと体にズレがあって。(昨年の)全日本は気持ちも落ちていて。試合でいい演技をするイメージがまったくわかなかったです」

 しかし、苦しみの中で希望を見出しつつある。

 今シーズン、グランプリシリーズ第2戦のスケートカナダでは、タクシー乗車中に事故に遭い、心身ともに厳しい状況だった。しかし凛然とした演技を見せ、世界中から称賛された。第4戦の中国杯も、フリーではジャンプのミスが出た。ただ、スピン、ステップはレベル4を獲得し、技術的な仕上がりのよさは見せている。スコアには出ない成長の跡が見えた。

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