紀平梨花が敗戦で得たもの。ロシア3人娘の背中は見えている (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

「今回のファイナルは、今後は4回転が必須になってくるとあらためて感じさせられた試合だったし、ショートのミスがすごく大きなものだとわかった試合でした。ロシア勢は本当に本番で強く、攻めた構成でもすごくいい演技をしていたけど、(私なりに)攻めた演技をしたにもかかわらず、その試合のその時間に一番いいものを出す力が足りなかったと思いました」

 敗戦から一夜明けた8日朝、報道陣に囲まれた紀平の表情は明るかった。4回転を跳ばず、紀平と同様、トリプルアクセルをSPとフリーで計3本跳んで優勝したコストルナヤとは合計31.12点の大差がついたが、大舞台で4回転サルコウに挑戦でき、自分なりの戦いができたからだ。

「フリーはジャンプの転倒やミスもありましたが、結構、満足した演技はできたと思いました。その時にできることは尽くせたかなと思うので、フリーに関してあまり後悔はないです。シニア2年目は守りに入るイメージがあったんですが、今回は1年目のような気持ちで挑むことができたし、追う立場でずっと上を目指していき、成長できるシーズンだと思ったので、自分のできることをしようと思ってやりました。

 点数がもっと上がるポイントは見つかっているので、それを次の試合で生かすように練習しないといけない。今回の試合の収穫は、4回転サルコウを跳んで転倒しても、そのほかであまり崩れなかったことです。すごくリスクのある演技をしたんですけど、そんな状況でも何とか高得点はもらえたと思うので、あの演技ができたことは(自分の武器のトリプルアクセルが)安定してきたなという気持ちがあります」

 前を走るロシア勢の背中はしっかりと見えている。痛めている左足首を完治させ、新たな武器である4回転サルコウを習得してベストな演技構成ができれば、また違う展開の勝負に持ち込める。紀平にとっては、そんな期待が持てるGPファイナルでもあった。





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