羽生結弦vsネイサン・チェン。GPファイナルは異次元の戦いの予感

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

「最初に滑った時にすごく感覚がよくて、『この氷大好きだな』と思ったんです。だからこそ、その氷が試合が進むにつれ、お客さんが入った状態などでどう変化し、どういう感覚になるかというのを確かめておきたいというのがありました。自分の好きな氷がどう変化していくかは、ひとつのベースになるかもしれないと思ったので」

 リンクコンディションへの対応策として、ひとつのヒントを見つけたとも言える。さらに4回転ルッツも「試合に入れられる状態になっている」と言い、氷の状況を見て選択できるというのも心強い。

 課題にしていた最初の4回転ループと4回転サルコウをしっかり決め、ケガなくGPシリーズ2戦を終えられたことで、「壁をひとつ越えられた」と話していた羽生。NHK杯は得点こそ305.05点にとどまったが、スッキリした気持ちでファイナルへ向かえる。

 そんな羽生に対して、チェンはスケートアメリカ299.09点、フランス杯297.16点とまだ全開とは言えないが、シーズンインがフリーだけで争われるジャパンオープンで、GPシリーズ初戦が第1戦のスケートアメリカだったことを考慮すると、コンディションが上がりきっていない状態での結果だったと考えることができる。

 ここまでの2戦で、チェンはいろいろと試している状態なのだろう。なかでも4回転ルッツの完成度はまだまだで、スケートアメリカのSPでは、着氷はしたもののGOE加点は0.82点。フリーの冒頭のジャンプは、4回転ではなく3回転+3回転にしていた。さらに、フランス杯ではフリー冒頭に4回転ルッツ+3回転トーループを予定していたが、着氷を乱して単発になり、そのあとに予定していた3回転ルッツに2回転トーループを付けてリカバーしている。

 また、フランス杯のSPでは、冒頭に4回転トーループ+3回転トーループを、スケートアメリカのフリーでGOE加点4.40点と調子のよかった4回転フリップを基礎点が上がる後半に持ってきていた。ただ、トリプルアクセルが2.29点減点される出来になり、フリップも加点を伸ばせなかった。

 フリーについては、スケートアメリカでは後半の4回転トーループが2回転になるミスだけだったが、フランス杯では冒頭の4回転ルッツに続き、後半の4回転サルコウと単発の4回転トーループで着氷を乱して減点されている。そのほか、4回転トーループ+1Eu+3回転フリップを前半に入れてフランス杯でしっかり成功させたように、新しいことにもチャレンジしている。

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