羽生結弦がファイナルで勝つために最も重要と考えていることは何か (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 また、今回のファイナルが、2006年にトリノ五輪が開催された会場で行なわれることにも羽生にとって大きな意味がある。

「トリノ五輪ではジョニー・ウィアさんが、フリーで『秋によせて』をやったと思います。『あの時は4回転をやって無茶苦茶になったのですごく悔しかった』と言っているのを聞いた記憶もあるけど、僕にとってウィアさんのあの演技はすごく特別で。『この選手に憧れてよかったな』と思って見ていましたし、彼のすばらしさをあらためて感じた試合のひとつでした。またトリノは、エフゲニー・プルシェンコさんが金メダルを獲った場所でもある。『秋によせて』と『Origin』は両方とも(ふたりへの)リスペクトをすごく掲げているプログラムなので、その意味でもあのプログラムたちとともにいい演技をして、僕自身もそこで金メダルを獲れたらいいなと思っています」

 ファイナルのジャンプ構成に関して、羽生はまだ明らかにしていないが、4回転ルッツも練習では跳べている状態で、氷のコンディションによっては入れる選択もできるとも言う。だがそこは、その時の体調やコンディションなど、すべてを加味して決定していくと決めている。

 そして、羽生自身が思い描くスケーター・羽生結弦の理想像は、「全日本ノービスを勝って自信の塊みたいになり、何でもできると思っていた9歳の頃の自分」だと言う。自分が心から好きだと思うことに熱中し、その自信に対して「すごく素直でいられたあの頃の自分」だと。

 そんな自分に、少しでも近づきたい。そう思う羽生にとって、3年ぶりのGPファイナルは勝つために出場する大会だ。彼のその思いは明確になっている。

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