羽生結弦はミスなく安定。最高得点の更新よりも自らの滑りに集中する (3ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

「でも、4回転トーループを降りたのでよしとします。及第点だったと思います。そのあとのフライングキャメルがうまくいかなかったなと思っているのと、ステップシークエンスに関してももっとスピードを出せたのかな......。スピンは全般的にスピードが出せなかったかなと感じています。もちろん、それが点数に完璧に反映するかどうかはわからないけど、自分の手応えとしてはもっとできたなという感じです」

 連続ジャンプのあとで若干スピードが落ちる滑りになったのを、羽生は「疲れが出たということではなく、少し慎重になったのかなと思います」と言う。その言葉どおりにステップとスピンはすべてレベル4にして取りこぼすことはなく、GOE加点もしっかり獲得している。自分では納得できないものもありながらも、その後は冷静に対処したことが、109点台の高得点につながった。それはスケートカナダ以降の羽生に、精神面の安定があるからこそなしえたものなのだろう。

 羽生は、スケートカナダではフリーで4回転ループのミスがありながらも、ネイサン・チェン(アメリカ)が出した世界最高記録に迫る322.59点を出しているからこそ、今回も「プレッシャーはあった」とも言う。だがそれは、自分の得点に対してのプレッシャーであり、世界最高得点に対してのものではない。

「スケートカナダはよかったはよかったですけど、まだできることがあるという状態のよかったなので。だから何か、そのあともよかったなと思ってやっているというよりも、よかったから頑張らなきゃ、という気持ちの方が強いですね。世界最高得点についても言われますけど、自分としては、今はとくに意識するものではないと考えています。

 今回の演技を終えてからはとくにそういう風にあらためて感じたので、今回の演技を糧にしっかり練習して、次の試合はいいショートをやりたいと思います。このNHK杯をしっかりやり切るために、フリーが気持ちよく、最後まで滑れるようにしっかり準備をしたいと思っています」

 自分がやりたいと思うことをやり切れば、得点もついてくるという思い。昨季とは採点ルールが変わったなかで、どこまで自己ベストを更新して得点を伸ばせるか。今の羽生にとってはそれが最大の関心事と言えるだろう。

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