紀平梨花は4回転時代を恐れない。NHK杯でロシア勢とガチンコ勝負 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 紀平は飄々と言ったが、恐ろしいほどの完璧性というのか。そこまで自分を追い込むと、普通は重圧を感じるものだが、緊張の皮膜に覆われることがない。不思議にズレた感覚を持っていて、自分を客観視できる底知れなさがある選手だ。

―アリーナ・ザギトワ、アリョーナ・コストルナヤという強敵との対戦については。

 記者からの質問に、彼女は自分の言葉で淡々と答えている。

「えっと、ミスが許されない戦いになると思います。トリプルアクセルを3本決めて、レベルも取りこぼさず、今シーズンのベストスコアを、ショート、フリーで出せるように。(グランプリ)ファイナルに向けて、ノーミスで」

 やはり、紀平は誰とも対峙していない。昨シーズンのファイナルの王者として、自分自身と向き合っているのだ。

<集中してる? 足は動いている?>

 紀平はそう自分に問いかけるという。紀平が紀平という選手を動かしているような印象だろうか。そうすることで、自分を冷静にさせ、焦りや迷いに振り回させない。超然として滑れるのだ。

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