髙橋大輔の心を動かした。失ったものを取り戻す山本草太の不撓不屈 (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 冒頭の4回転サルコウで転倒すると、次の4回転トーループ+2回転トーループも着氷が乱れてしまった。4回転トーループは成功したものの、トリプルアクセルでやはり転んでしまう。138.79点とスコアは伸びず、フリーは3位に沈む。その結果、ショート6位だった友野一希(21歳)に逆転で優勝を奪われることになった。

―NHK杯に向けては?

 フリー後、取材エリアで訊かれた山本草太は、答えに詰まった。終えたばかりの演技に対し、納得がいかず、そこまで頭が回らない。顔に噴き出した汗が光っていた。

「ジャンプを全部決められるように」

 山本は簡潔に言ったが、記者も追いすがった。

―具体的にどんな目標で?

 山本は右腕の袖で額の汗をぬぐいながら、答えを絞り出した。

「まあ、ジャンプですかね。他の(演技)は思い切りできたと思うんですが。ジャンプがあれだけ失敗しちゃったんで」

 今シーズン、山本はジャンプの練習量を増やしたという。しかし、ブランクを取り戻すのは簡単ではない。4回転の練習に気力体力を向けると、滑る体力の増強や、ほかの技術の整備に時間がなくなる。一朝一夕に、世界レベルには追いつかない。

「今は(ジャンプを)跳べるイメージがないです。自分はアクセルが下手で。みんな当たり前のように飛んでいるけど、難しいジャンプ。気持ちだけではどうしようもない。技術が足りず、4回転を3本入れて決められるほどには(実力が)到達していない、と実感しています」

 山本は苦しげに言った。

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