髙橋大輔の心を動かした。失ったものを取り戻す山本草太の不撓不屈 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

―現役復帰のスイッチとなった瞬間は?

 髙橋に聞いた時に、彼はこう答えた。

「(山田)耕新、(山本)草太の演技でした。耕新は社会人になって一度(競技を)離れても、仕事をしながらスケートを続けていて。草太は手術をして戻すのも大変なのに、気持ちが伝わる演技だった。勝たなくてもいいというか、(それぞれが)目標に向かって精いっぱいやっても大丈夫じゃないか、と励まされたんです」

 山本の演技が、髙橋の心を動かしたとも言える。誠実にスケートに向き合い、失ったものを取り戻してきた。今シーズンはフィンランディア杯のショートで、宇野を超えて1位になるなど悪くないスタートだ。

 そして西日本選手権、山本はショートで75.05点と首位に立っている。トリプルアクセルを失敗したものの、4回転サルコウ+2回転トーループ、4回転トーループはどうにかまとめた。

「試合を前にジャンプの調子は落ちていたんですが、決める意識を持って挑んで。アクセルはうまく浮き上がれず、決めたかったですね。(最近は)4回転の練習に集中しすぎているので、アクセルの練習も増やしていきたい」

 山本は演技後にそう洩らした。天才と言われた選手は、現状に甘んじていなかった。

 しかし翌日のフリーは演技後、ゆがんだ表情がすべてを物語っていた。

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