坂本花織の笑顔にひと筋の光明。
ロシア勢に対抗できる道はあるのか

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • photo by AP/AFLO

 フリーで「今できることをやり切れた」のは、SPで、ダブルアクセルを跳んだあとに転倒し、得点が伸びずに4位と出遅れたからだと言う。

「もう失うものは何もないと思って、思い切って自分なりに楽しんでやりました。細かい部分、回転不足とかエッジエラーを取られたのは仕方ないんですけど、ぱっと見、ノーミスでできたので(笑)、次にある全日本選手権につなげられるように、練習が大事になると思うので、やっていきたいです」

 目標のひとつだったGPファイナル出場の可能性は消えたが、演技の手応えと自信はついたようだ。ただ、今季はシニアデビューしたロシアの若手3選手が、戦前の予想どおりGPシリーズ前半の3大会で旋風を巻き起こしている。そんな彼女たちに、4回転やトリプルアクセルをまだ跳んでいない坂本がどこまで通用するのか。これについては当の本人も手探りの状態だ。

「昨年はGP2大会で表彰台に乗って、ファイナルに行って、全日本でも表彰台に乗って......と、自分の中でモチベーションがすごく上がっていたし、勢いがあったんですけど、今年は昨年の勢いがなくて......。まず、4回転を跳ぶ子たちに勝てる気がしないという気持ちがあって、それに勝っていくにはどうしたらいいんだろうなと思いながら何となく練習して、そして試合が来て(結果が)悪くて、やっぱり練習しないといけないなと思って練習して、でもまた試合が来るとまた悪くて......というのが今年は続いているなと思います」

 それでも戦っていくしかない現状で、どうモチベーションを保てばいいのか。今後はそこがカギを握ってくるだろう。

「モチベーションを持つことが一番難しいんですけど、とにかく自分がいまできることをしっかりやるしかないので、全部の要素で(GOEを)プラスしてもらえるようにしていきたい。そうやってちょっとずつ点数を稼いでいかないと勝ち目はないと思っています」

 理想の演技を100パーセンだとすると、現時点ではまだ「65パーセントくらい」と坂本は言う。それは、35パーセントも伸びしろがあることを意味している。さらに習得中のトリプルアクセルが武器のひとつになれば、4回転時代を迎えた女子のトップ争いにも再び加わっていける可能性は高い。

 次元の違うロシアの若手選手が席巻している今季だが、坂本を含めて、日本勢が対抗できる余地はまだ十分にあるはずだ。


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