宇野昌磨、自己ワーストの衝撃。得意のジャンプはなぜ崩れたのか (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • photo by AP/AFLO

 その原因の一番は、何と言ってもコーチの不在だろう。ジャンプは非常に繊細な技術であり、メンタル面に大きく左右される。基本に忠実な跳び方でなければならず、些細なことでトップ選手でも一気に崩れてしまうことがある。

 だから、ほとんどのフィギュアスケート選手にはコーチがついており、トップ選手の場合、専属コーチ以外にも、ジャンプコーチや表現面を指導するコーチなど複数のサポート体制が組まれていることは珍しくない。

 宇野は今年6月、幼少時から指導を受けていた山田満知子、樋口美穂子の両コーチのもとを離れた。新たな練習拠点とコーチを探したが見つからず、結局、シーズンインしてからもコーチ不在の状態が続いている。

 滑り込むことで安定感や完成度を高める大事なオフシーズンは、第三者的な目線を持つ外からの助言を毎日受けられる期間でもある。宇野の場合、ひとりで練習に取り組んでいた時間が多かったかもしれない。そのことで、知らず知らずのうちにジャンプに癖がついてしまい、ちょっとしたズレが跳ぶうちに大きくなって崩れてしまったのではないだろうか。

「僕はこのシーズンオフに、いろいろな場所でいろいろな経験をしましたが、すぐに成果が出るとは思っていません。いまの段階では、コーチに関してはまだ言えないこともたくさんあるので、(コーチの発表は)年明けになるんですかね。それまでお待ちしていただけたらなと思います」

 SP後の囲み取材では、不在の穴が大きくなっている新コーチの存在をにおわせる発言があった。これを素直に受け止めるならば、コーチの存在がどれだけ自分に必要かをこのフランス杯で痛感したはずなので、早急にコーチについて練習に取り組むことになるのではないか。

 また、フリー後の囲み取材ではこんなことも言っていた。

「今回はお母さんが現地に来ているんですけど、僕はいまコーチ不在ということで、それもあってコーチ以外の方に支えていただくことが多くなった。ただ、こうやって数試合を経験して、やはりコーチというものがいたほうがいた方がいいのか、最初はまったくわからなかったけれども、断言はできないですけど、僕の弱さを少しでも一緒になって(取り除いて)くれるコーチをつけたほうがいいのかなと思っているところです」

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