宇野昌磨、自己ワーストの衝撃。得意のジャンプはなぜ崩れたのか

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • photo by AP/AFLO

 グランプリ(GP)シリーズ第3戦フランス杯で、誰もが予想しなかった衝撃の結果が出た。平昌五輪銀メダリストであり、シニア転向後GPシリーズで連続して表彰台に乗っていた宇野昌磨が自己ワーストの8位の惨敗。5年目にして初めてメダルを逃した。これにより、4年連続で出場し、表彰台を外したことのないGPファイナル進出も絶望的となった。

「フリーで本当に多くのミスをしてしまいました。ただ、ショート(プログラム=SP)のような(投げ出す)気持ちは一切なく、最初から最後までどれだけミスしても、最後まであきらめずに、思いきりいけたんじゃないかなと思います」

フランス杯で総合8位に終わった宇野昌磨、フリーの演技フランス杯で総合8位に終わった宇野昌磨、フリーの演技 転倒や回転不足、レベルの取りこぼしなどが頻発、ボロボロの状態だったフリーの演技直後、宇野の顔は蒼白で、茫然自失の体だった。何とか苦笑いを浮かべて、ひとりキス・アンド・クライに座ると、しばらく顔を上げることができなかった。会場のファンは温かいまなざしと熱い声援、大きな拍手を送って、うちひしがれる宇野を励まし続けた。そのファンの思いに、宇野の目からみるみる涙がこぼれる。両手でそれをぬぐい、そして顔を上げて感謝の気持ちをお辞儀で返した。

「自分がもしひとりで演技して(誰もいなくて)歓声が何もなかったら、決して泣くことはなかったと思うんですけど、本当にあのような演技をして、それでも歓声をたくさん送っていただいたことに、うれしさと、言葉では表現できない涙が出てきました」

 SPで2度、フリーでは3度もジャンプで転倒。しかも最大の武器で得点源となってきた得意のトリプルアクセルをSP、フリーで一度も成功させることができなかった。さらに言えば、その転び方が危険水域と言えるほどひどかった。これ以上崩れた跳び方のままにしておいたら、得意のジャンプがひとつ消滅しかねないほどだ。

 なぜ、これほどまでにジャンプが崩れてしまったのか。昨季まで跳べていたトリプルアクセルや、フリップとトーループの4回転ジャンプも不安定になって跳べなくなったのか。

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