髙橋大輔、西日本選手権欠場。思い出す昨シーズン終了後の言葉 (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 そこで、彼は一つの境地に達した。

「初めて、人前でフィギュアスケートが好き、と言えるようになりました。それまでは『必要なものかな』って答えていました。嫌いじゃないけど、みたいな」

 そこに、フィギュアスケーターとしての矜持が濃厚に浮かぶ。髙橋はスケートと真剣に向き合ってきた。軽々しく、好きとは言えないほどに。

 一方で、アスリートは永遠ではない。肉体は必ず衰える。スケーターは練習後、スケート靴を脱いだまま、動けないほど消耗することもあるという。単純に考えて、片方の足首だけでその全体重を引き受け続ける。その負担はすさまじく、ねんざ、打撲は日常茶飯事だ。

「(スケーターの現役生活は)10年が限界」

 元世界王者のスペイン人スケーター、ハビエル・フェルナンデスはそう明かしていた。

 髙橋は10年以上をシニアとして滑り切ったあと、4年ぶりに復帰している。一人の競技者として、誰も成し遂げていない挑戦だった。そして復帰2年目、彼にとっても、未知の世界なのだ。

 残念ながら、西日本選手権での演技は見られない。髙橋は練習で限界を超えてしまったのか。しかし、その愚直さも彼らしい。

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