髙橋大輔、西日本選手権欠場。思い出す昨シーズン終了後の言葉

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 10月31日、髙橋大輔(33歳、関大KFSC)は西日本選手権(滋賀県立アイスアリーナ)を欠場することを急遽、発表した。

「左足関節捻挫および左足関節外側靱帯損傷」

 30日の練習中に左足首をひねったという。1週間の絶対安静が必要。シングルスケーターとして最後の舞台になる12月の全日本選手権に向け、万全を期した格好だ。

 一番、苦い思いを感じているのは、髙橋本人だろう。

西日本選手権の欠場を発表した髙橋大輔西日本選手権の欠場を発表した髙橋大輔 シングルスケーターとしての終焉が近づくなか、自らを追い込んできた。ショートプログラムは激しいロックビートの「The Phoenix」をあえて選択し、当初は「後悔しています」と笑っていたものの、10月の「カーニバル・オン・アイス」では見違えるほどに完成度を高めていた。難しい演技に挑み、仕上がりは悪くなかった。

 それだけに、大会直前での欠場は無念だろう。

 しかし、髙橋はこれまでも苦難を乗り越えることで、男子フィギュアスケートの伝説を作ってきたのだ。

 岡山県の倉敷でスケートを始めた時、髙橋は専門的な指導はほとんど受けていない。ほとんどすべて、独学で学び取った。基本練習にしつこく打ち込むことで安定した滑りを手にしたが、フィギュアスケートがマイナーの域を出なかった時代、すべては手探りだった。

 その環境で、髙橋は世界に打って出て、男子フィギュアスケートの人気を定着させている。4回転ジャンプに果敢に挑み、失敗してもひるまなかった。華やかなステップは世界のスケートファンを魅了。そして五輪でメダルを取り、世界王者にもなり、後輩たちの道を大きく広げた。

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