紀平梨花はさらに進化する。トゥルソワに勝つために必要なことは何か (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 今季のフリープログラムは4回転サルコウに挑戦することを想定し、最初に3回転サルコウを入れてから、そのあとにトリプルアクセルを入れる構成にしている。

 だが今回は、最初にトリプルアクセルを2本入れる昨季の構成に戻した。「練習では8割はサルコウを跳ぶ構成で練習をしていたので、逆に一発目のトリプルアクセルのタイミングがつかめなくて。ここに来てからも、跳ぶ前のバッククロスの回数とかを考えて、オドオドしながらやっていたところもあった」と紀平は言う。

「今回は4回転サルコウを入れられなかった時点で、こうなる可能性はあると考えていたので、それを再確認した試合でした。北京五輪まで時間は少ないので、今シーズンのうちに4回転サルコウを完成させたいという思いはあるけど、ケガもあってまだあまり練習ができていない。

 ただ、3回転サルコウは回転にも余裕があるし、たくさん跳んでいた時は4回転のレベルもだいぶよくなっていました。ケガを治して4回転の練習をするとともに、今季の構成で3回転サルコウをタイミングよく跳ぶ練習をして入れば、けっこういい感じで4回転も習得できるかなとも思う。しっかりマスターできるように、冷静になりながら、着実にやっていかなければいけないと思います」

 紀平は昨季のGPファイナルのフリーでは、4回転ジャンプを入れていないトリプルアクセル2本と3回転ルッツを2本の構成で、160点に乗せられる可能性を見せていた。また、トゥルソワは今後さらに安定感を増していく可能性は高いが、彼女がトリプルアクセルを跳べていない現時点ではSPは74点台。紀平のSPの最高得点は83.97点なので、10点近いアドバンテージを得られる。

 だからこそ、フリーで160点台を出すことができれば、トゥルソワにプレッシャーをかけることもできる。

 今後、4回転サルコウをプログラムに組み込むことはもちろん必要だが、まずは早くケガを治し、3回転ルッツをしっかり跳べるようにすることが先決だろう。3回転ルッツを入れたプログラムでノーミスの完璧な演技を達成することが、トゥルソワに勝つための最初のステップになるだろう。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る