紀平梨花はさらに進化する。
トゥルソワに勝つために必要なことは何か

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 こう話した紀平は、フリーへ向けては「完璧にしないと今日の順位もわからないくらいにレベルの高い試合だと思うので、とにかく完璧にするのみだと思っています」と気持ちを引き締めていた。

 翌日のフリーでは、トゥルソワが予想どおりのすごさを見せた。最初の4回転サルコウは転倒したが、その後の4回転ルッツと2本の4回転トーループを含むジャンプはすべてきっちり跳び、自身がネペラメモリアルで出していた世界最高得点を更新する166.62点。合計も世界最高の241.02点にしたのだ。

 それでも紀平は、「あの点を見てどうなるかと思ったが、しっかりできたので精神的な成長はあると思う」と濱田コーチが話すように、動じない演技をした。

 最初のトリプルアクセルは、着氷でステップアウトとなるミスをした。

「踏み切りのタイミングを外してしまったので、自分でもやってしまったなと思った。回転はしっかりしていたけど、修正がちょっと遅れたというか、修正が利かないくらい軸が少しズレてしまった」

 だが、次のトリプルアクセルはしっかり2回転トーループを付けて連続ジャンプにすると、他の要素はノーミスで滑り切って148.98点を獲得。合計は230.33点。昨季のGP(グランプリ)ファイナルに次ぐ2度目の230点台に乗せた。

「すごい得点を出されたあとの演技は今までにない経験だったので、その中でもまとめられたことはよかったけど、もっともっと完璧を目指したいです。3回転ルッツがない構成でアクセルのミスがあっても、230点を超えられたのはすごい成長だなと思ったんですけど、ミスはミスかなとも思った。

 ノーミスをずっと続けていけるようにしなければいけない課題が見つかった。次の試合へ向けて『頑張るぞ』という強い気持ちになったので、すごくよかったです」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る