羽生結弦に不安の色はなし。「少しずつでも、いい方向へ」

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 カナダ・オークビルで9月13日(現地時間)に行なわれたオータムクラシック男子ショートプログラム(SP)で、羽生結弦は転倒からのスタートになった。

 午前の公式練習では、それまで軽々と決めていた4回転サルコウが、曲かけではしっかり成功はしていながらも、滑りのスピードが少し出すぎていたためか、軸が若干進行方向に向かって右側に動いている印象があった。本番ではそれが逆に左側にズレていき、いきなり転倒、というスタートになったのだ。

オータムクラシックでSP首位発進の羽生結弦オータムクラシックでSP首位発進の羽生結弦「ジャンプに入る前から、もう駄目でしたね。コースが違うので、しょうがないなと思っていました。気合いは入っていたんですけど、世界選手権の失敗をちょっと引きずっているのか、それが頭をよぎって、何か無駄に意識してしまうんです。『この時にこういうミスをしたな』と一瞬考えてしまうというか。

 僕はすごく理論で固めてしまうタイプだけど、今回のサルコウが感覚的に跳べていたジャンプだったからこそ、細かいズレが出た時にちょっと考えてしまい、理論に引っ張られすぎたのかなと思います。今年は世界選手権からシーズンが始まっていると思っているので、その意味でも世界選手権と自分の気持ちが近すぎて、それゆえに何か無駄な力みがあったんだと思います」

 こう話す羽生は、前日の余裕とは違う緊張感を公式練習で滲ませていた。

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