髙橋大輔、現役復帰2年目の野望。導かれる次の境地へ蘇り続ける (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 髙橋は、不世出のフィギュアスケーターである。トリノ、バンクーバー、そしてソチと、3度の冬季オリンピックに出場。2010年のバンクーバーでは膝の大ケガを乗り越え、日本男子フィギュアスケート初のメダルを手にした。同年の世界選手権では優勝。記録は偉大だが、それ以上に、日本国内で男子フィギュアスケートの人気を高めた功績が大きい。2014年ソチオリンピック後、引退を表明した。

 しかし、第二章があった。昨年7月に現役復帰を果たすと、近畿選手権、西日本選手権と勝ち上がり、全日本選手権で2位。4年ぶりの復帰での躍進は、アスリートとしての常識を覆すものだった。

「昨シーズンはうまくいきすぎたなと。今シーズンは、選手の成長を見たり聞いたりして、そうはうまくいかないと思っています。その中で、表彰台を目指す、というのは一つの目標です」

 髙橋は淡々と言う。気負いはないが、野望も失っていない。

「(新しいショートのプログラムは)陸で作ってきた振り付けを氷に持ってきたところで、同じようにバランスを取るのが難しいですね。スタートのポーズのところから、なかなか踏ん張りがきかなくて。思うとおりに動けず、やばいなって(笑)。陸でやる三分の一しか(氷上では)できない。踏ん張れない分、上半身を使えなくて、そこの調整をしているところです。ステップを減らさないと、とか、トランジションをとるか、とか。8月頭に始めたばかりなので、これからどんどん体に入っていくはずです」

 多くの戦いを積み重ねてきた男は、焦っていない。限界を突破する中、最大限の力を出し切れる着地点を探している。不可能と可能、狭間の格闘だ。

「4回転も挑戦しようと思っていたんですが、この(テンポの激しい)プログラムでは厳しいかなと。ジャンプの構成は、昨シーズンと変わらずに続けていこうと思っています。(ショートは)5コンポーネンツ(演技構成点)で"魅せる"ことによって点数を出せるように。スケートっぽくないところを評価してもらえたらうれしいし、もしできなければ、自分のパフォーマンスの力不足ということで。ショートで魅せて、フリーで点数を稼ぐ、くらいの気持ちの切り替えで挑もうと思っています」

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