羽生結弦の好敵手。ネイサン・チェンは
さらに成長する可能性を秘める

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 羽生の演技直後の滑走になったフリーでは、3種類4本の4回転を含むジャンプをしっかり決め、スピンとステップもレベル4のノーミスの滑り。216.02点を獲得して、合計323.42点で優勝。大会連覇を果たしたチェンはフリー後にこう語った。

「世界選手権という大きな舞台でより大きなプレッシャーがあるなか、ショートとフリーともにいい演技ができたことは幸せです。もちろん、まだまだ改善の余地はありますが、今回の結果については満足しています」

 チェンは、ルッツやフリップ、トーループだけではなくサルコウも含む4回転ジャンプを武器にしている。これまでは、平昌五輪のSPでジャンプのミスを連発して17位発進になるなど、若干の粗さや不安定な面を見せていたが、今シーズン、プレッシャーがかかる全米選手権、世界選手権でノーミスの演技をした実力は本物だ。

 躍進の予兆は昨シーズンからあった。

 2018年平昌五輪のフリーでは、サルコウを入れた4種類6本の4回転を入れる構成に挑戦し、単発の4回転フリップで着氷を乱すミスはあったものの、それ以外はノーミス。フリートップの215.08点を獲得して、総合5位まで追い上げた。

 その1カ月後の世界選手権のSPでは、101.94点でトップに立った。さらに、フリーではライバルたちがミスを連発して脱落していく異様な雰囲気のなか、最終滑走だったチェンは平昌五輪と同じ4回転6本の構成に挑戦。ミスを最後の4回転サルコウのステップアウトだけにとどめて、世界歴代2位となる合計321.40点で優勝した。

 平昌五輪のフリーと昨年の世界選手権という大舞台で自分の力を出し切れたこと。それが、チェンの現在の活躍につながっているのは間違いない。

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