ザギトワら輩出した虎の穴の秘密。「エテリ軍団」はさらに勢力拡大中 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 女子フィギュアスケート界で圧倒的な強さを誇ってきたロシア勢だが、目覚ましい活躍を見せている選手のほとんどがエテリの門下生。その手腕は世界中の指導者から一目置かれていると言っても過言ではない。

 その指導法は、とにかく厳しいことで有名だ。彼女がコーチを務める「サンボ70」というアスリート養成学校からは、安定感抜群で軸の細い、似たタイプのジャンプを跳ぶ選手が輩出されている。このエテリ流のジャンプを跳ぶためには、厳しい体重調整が課せられていると言われており、クラブのエースであるザギトワ曰く、「ご褒美としてときどき食べられるお菓子はひとかけらのチョコレートくらい」だそうだ。

 その反面、食事制限をしながら体型やジャンプ力を維持するのは、若い選手にとってはつらく苦しい生活に違いない。そればかりか、心身のストレスにもつながり、選手寿命を短くしかねない。

 世界選手権で2位になったトゥルシンバエワは、昨季までブライアン・オーサーコーチに指導を受けていたが、成績は伸び悩んでいた。そこで今季から古巣に戻ってエテリに師事するようになると、ジャンプが開花し、これまでにない結果を出すことができるようになった。

「エテリ軍団」には他にも、ジュニアを席巻している世界ジュニア選手権2連覇のアレクサンドル・トゥルソワ、ジュニアGPファイナル女王のアリョーナ・コストルナヤ、ロシア選手権を初制覇した15歳のアンナ・シェルバコワらがいる。

 これに対してメドベデワは、約10年にわたって「エテリの秘蔵っ子」として指導を受け、歴代最高得点を何度も更新するなど強さを誇った。しかし、平昌五輪でザギトワに敗北を喫すると、その2カ月後にエテリと訣別。羽生結弦ら世界のトップ選手を指導するオーサーコーチに師事することになり、世界中のフィギュアスケート関係者やファンに衝撃を与えた。

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