羽生結弦の今季、五輪後はフワフワ。チェンに敗れて再び火が灯った (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 ジャンプを全部立てたというのは、大きなステップになったんじゃないかと思うけど、自分の中では加点をしっかりもらってこそ成功だと思っているので。この試合で終わらせるつもりはないですし、しっかりいいジャンプができるように頑張ります」

 今の自分ができて、やりたいと思うジャンプで構成したプログラム。それをしっかり完成したいという思いは強かった。そんな気持ちがはっきりと形になって出たのは、2週間後のロステレコム杯(ロシア大会)のSPだった。

 3本のジャンプで加点をもらい、フィンランドで取りこぼしたステップもレベル4にするノーミスの滑りで110.53点を獲得。「自分の気持ちや思いをしっかり出したい」と、スピンとステップのみにした後半の滑りは圧巻だった。

「フィンランドほどミスと言えるようなミスはなくて、今日の演技くらいだったら自分でもノーミスと胸を張って言えるくらいです。でもジャンプの着氷でちょっとぐらついたところがあったのは悔しい」と自分への厳しさ見せる一方で、「たぶんこの得点が、この構成ではほぼマックスじゃないかな」と、満足感も口にしていた。

 翌日のフリーは公式練習で右足首を痛めてしまい、満身創痍の状態で臨まなければいけなくなった。ケガをした直後に「氷上で今の自分ができる構成を考えた」という羽生は、4回転ループを外した構成で臨んだ。そして前半は丁寧にきれいな滑りをしたが、終盤の3本のジャンプでミスを連発してしまった。

「とりあえず4回転を3本決められたのはよかったけど、痛みというより感覚のなさが出てしまいました。(タチアナ・)タラソワさんには『よく頑張ったね』と言われましたが、本当は『すばらしかったね』と言われるような演技をしなくてはいけなかった。今回プルシェンコさんは来てないけど、タラソワさんや(アレクセイ・)ヤグディンさんなど、僕がスケートに熱中するきっかけになった方々がいるロシアという地で、こういう結果になったのはすごく悔しい。フリーも、今季の構成での完成点が見えているような状態なので、それを何とかここでやりたかったなという気持ちが強かった」

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