「気張りすぎていた」羽生結弦。逆転勝利のためにやるべきことは (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 準備がしっかりできていたことは間違いない。前日、20日の午後5時5分から始まった公式練習で曲かけはフリーだったが、リンクに上がってから3分弱が過ぎた段階で、SPのスタートポジションから滑り出すと、4回転サルコウをきれいに決めた。その流れのままにトリプルアクセルと4回転トーループ+3回転トーループを跳び、続くスピンふたつとステップ、最後のチェンジフットコンビネーションスピンから最後のポーズまで、SPの内容をノーミスで滑り切った。プログラムを完璧に手の内に入れているようだった。

 だが、試合当日になって羽生に不安が芽生えた。それは6分間練習の終了2分前くらいだったと言う。

「6分間練習の時に、なかなかジャンプに入るタイミングが合わなくて、それで少し軌道を変えて入った1本目のサルコウをミスしました。実質、ちゃんとできたのは2本目の1回だけだったので、それが不安材料になってしまったかなと思います。ソチ五輪の時のフリーの6分間練習みたいな感覚になってしまっていました。はっきり言ってウォームアップなしでも4回転サルコウは跳べるジャンプですし、ショートもノーミスでできるものだったんですが、無駄に不安の原因を作ってしまったという感じです。

 これまでで一番悔しかったソチ五輪のフリーの経験を、ちゃんと使わなければいけなかったと、反省しています」

 予兆は、SP当日昼の公式練習からあった。前日までは日本勢3人を含む5人での公式練習だったのが、この日からは最終組6人での練習になっていた。その中で宇野昌磨もそうだったが、コース取りが合わない選手がいて、ジャンプに入ろうとして躊躇したり、コースを変えるシーンも見せていた。

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