宇野昌磨にとって、過去2回より
今年の全日本制覇が意義深い理由

  • 折山淑美●取材・文 Text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

「回転不足で転ぶのが一番足に負担がかかるかなと思っていたので、回り切るしかないと思っていた。本当は3回転サルコウにしなさいと言われていたけど、6分間練習の時に先生に『ごめんなさい』と言って4回転フリップに切り替えてガツンといきました。

 無理をすることはよくないけれど、ショートが終わった時はこれまでにない達成感を得たというか、五輪以上にうれしいショートだったなと思った。無理したことで自分が何を得ることができたかわからないですけど、まったく後悔していないし、むしろうれしかった」

 その心情の奥には、2018年3月の世界選手権(ミラノ)の経験があったのかもしれない。

 この大会で宇野は、スケート靴を替えたことで右足甲に痛みが出て、病院で診察を受けるほどだった。もともとは最初に4回転フリップを跳んで、後半に4回転トーループ+3回転トーループの構成だったが、痛めた後に最初の4回転をトーループにして、連続ジャンプは3回転サルコウ+3回転トーループに難度を落として臨んだ。

 結局、3回転サルコウで着氷を乱して連続ジャンプは2回転トーループをつける形になり、SPは5位発進。「安全策を取ったけど、そのサルコウで失敗してしまった」と悔しそうな表情をしていた。

 そんな悔しい思いをしないために、今大会はフリーでも4回転フリップに挑戦し、しっかり降りた。3回転に抑えたサルコウと4回転トーループは着氷を乱したものの、その後はいつもの構成どおりにジャンプをしっかり跳ぶと、最後は3回転サルコウ+3回転トーループから変更した3回転ループをきっちり決め、スピンとステップはすべてレベル4にする滑り。187.04点を獲得して合計を289.10点にし、2位の髙橋大輔に50点近い差をつける圧勝で全日本3連覇を達成した。

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