フィギュア超絶マニアが、羽生結弦の金メダル演技を異常に細かく分析 (2ページ目)

  • 高山 真●文 text by Takayama Makoto  photo by JMPA/Noto Sunao

 1月に発売した拙著『羽生結弦は助走をしない』で書いた「平昌シーズンの、羽生の演技のツボ」と重複する部分があることをご了承ください。この本の中で、私は2017年のオータムクラシックの演技に対して、自分なりの考察をしています。オータムクラシックの羽生結弦のショートプログラムは、男子シングルの世界歴代最高得点の演技ですが、平昌ではケガからのブランクがあったにもかかわらず、その名演技と同じ構成、難度のプログラムを完ぺきに実施しました。

 ショートプログラムが終わった瞬間の、

「ひとつめの奇跡を、この目で見た」

 という私の感想は、決して大げさではなかったと思います。

 羽生結弦の平昌オリンピックのショートプログラム、使用した曲は『ショパン バラード第1番』。

 ピアノの音符ひとつひとつとピッタリとシンクロする羽生結弦の足さばき。なんと言えばいいか......。

「氷そのものが大きなピアノで、羽生結弦のエッジが、その大きなピアノの演奏をしている」

 というイメージです。

 そして、プログラム全体から羽生が放つ雰囲気も、ショパンのピアノ曲のイメージに合わせている。

「ひとつひとつの足さばき」も「足さばきの集合体としての、全体の雰囲気」もシンクロしているわけです。見事な二重構造だと思います。

●スタートのひと漕ぎのあと、左足のフォアインサイドから、一瞬のターンでバックアウトサイドにエッジが変わる。このターンをブラケットと呼びますが、このなめらかさと、バックアウトに変わってからの、糸を引くような迷いのないトレースが素晴らしい。

 2015-16年シーズンと同じ曲を使っているのですが、そのシーズンと比べても進化・深化は明らか。バックアウトに変わってからのポジションの保持の時間が、1拍分のびていて、その分距離も出ています。

●最初のジャンプのための助走にあたる漕ぎは、三蹴りほど。その時点で、すでに曲の音符と足さばきがピッタリ一致している。

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