ザギトワは「10代半ばの五輪金メダリストは消える」歴史を覆せるか (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha  photo by JMPA/Noto Sunao

 鬼コーチと呼ばれるエテリ・トゥトベリーゼへの感謝の言葉を述べるとともに、厳しい練習をやり続けてきた自負心をのぞかせた。

 若さと勢い、そして、プログラム後半に全てのジャンプを跳ぶ演技構成。高難度ジャンプを軽やかに跳びながら、バレエのような身のこなしと動きを氷上で見せた高い身体能力......。そんな溢れんばかりの才能を十二分に発揮して頂点に上り詰めたのだ。

 ただ過去を見れば、ザギトワと同じように若くして五輪女王になったリピンスキーも、16歳で2002年ソルトレイクシティを制したサラ・ヒューズ(アメリカ)も、戴冠した直後に競技者を引退してプロスケーターの世界に入ってしまった。バーンアウト(燃え尽き症候群)の一種で、競技者としての目標を見失い、プロの世界が魅力的に映ったのかもしれない。

 前回のソチ五輪を17歳で制覇したアデリナ・ソトニコワ(ロシア)もまた、靱帯断裂の大ケガを負ってからはパッとしないまま3シーズンを棒に振り、狙えるはずの2度目の五輪出場を諦めざるを得なかった。

 これまでの女子シングルの歴史を振り返ると、1994年リレハンメル五輪に彗星のごとく現れ、16歳でチャンピオンになったオクサナ・バイウル(ウクライナ)以来、10代半ばで五輪女王になった若き逸材たちは、その後に活躍を見せることなく、競技会から姿を消してしまっているのだ。

 だが、ザギトワは次回の2020年北京五輪まで「競技者を続けるつもりだ」と宣言した。ひとつ歳を重ね、新しいプログラムで挑むはずの来季はどんな成長を見せてくれるのか、今から楽しみでならない。

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