番記者は見た。羽生結弦、
ケガしたからこそ勝つ「金メダルへの執念」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA/Noto Sunao

 それでも、SPでの力みのないジャンプは、ケガをする前よりも完成度が高くなっているようにも見える洗練された跳び方だったため、「このジャンプならばフリーでも体力が持つのではないか」とも思えた。そんな期待通り、後半に入ってすぐの4回転サルコウ+3回転トーループは加点2.71点できれいに決めている。

 ところが次の4回転トーループは着氷が乱れ、1回転ループ+3回転サルコウを跳べずに連続ジャンプにできなかった。そのため、次のトリプルアクセルに付ける予定だった2回転トーループを1回転ループ+3回転サルコウに変更してカバーしたが、そのジャンプには少しだけ力みが感じられた。

 続く3回転ループは確実に跳んだが、「足の痛みが最も影響する」と話していた3回転ルッツは着氷で乱れ、なんとか耐えたもののGOEも減点された。やはりスタミナ切れが露見したか......とも思われたが、結局は後半の4回転トーループと3回転ルッツ以外に大きなミスなく終えたところは「さすが」としか言いようがない。演技終了後、羽生は右手の人指し指を立て、「1」という数字を表した。

「演技が終わった瞬間に勝てたと思いました。前回のソチ五輪のときは、フリーが終わった後は『勝てるかな?』という不安しかなかったので。でも、今回は自分に勝てたと思いました」

 羽生のフリーの得点は、4種類6本の4回転に挑み、SPの悔しさを晴らす215.08点を獲得したネイサン・チェンに次ぐ206.17点。総合得点を317.85点に伸ばし、後に控えていたハビエル・フェルナンデス(スペイン)や宇野昌磨に10点以上の差をつけて、66年ぶりの五輪連覇を達成した。

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