熱狂する観衆、クールな羽生結弦。完璧な王者がリンクに帰ってきた (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA/Noto Sunao

 後半のトリプルアクセルもきれいに決めて勢いをつけ、4回転トーループ+3回転トーループの連続ジャンプからキレのあるステップに移る。『バラード第1番ト短調』というプログラムを、全体の流れだけではなく、ジャンプの跳び方やスピンの回り方などまで含めて、すべてコントロールしているような演技だった。

「江陵に入ってからはジャンプの本数を制限していて、特にサルコウに関しては体が動いていない部分があったと思います。そこに刺激を与えるような形で練習していたんですが、本番では思った通りに体が動いてくれましたね。しばらく試合では跳んでいなくても、自分の体がジャンプの感覚を覚えていると思っていました。アクセルもトーループもサルコウも、何年間も一緒に戦ってきたジャンプなので、そういった感謝を込めながら跳びました」

 最後のチェンジフットコンビネーションスピンはレベル3と取りこぼしたが、出来栄え点(GOE)の加点は2点と3点をずらりと並べた。初めてSPで110点台を出した2015年のGPファイナルと比較しても、連続ジャンプが後半に入っていることを考慮に入れれば、ほぼ同じくらいの得点が出る構成になっていた。演技構成点は若干低かったが、それは久しぶりの試合だったことも影響しているだろう。

 16日のSPで羽生が演じたバラードには、「現時点でやれることをやるだけ」という冷静な気持ちが表れていた。落ち着いていたとはいえ、あっさりノーミスで演じきってしまうのが彼のすごさだ。

 17日のフリーでも羽生が冷静に自分の演技に徹することができれば、おのずと2大会連続の五輪金メダルが見えてくる。

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