フィギュア団体の滑りで見えた、
宇野昌磨のシングル金メダルへの道

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by JMPA(Noto Sunao)

 2月8日のスキージャンプ男子ノーマルヒルの予選に続き、開会式に先駆けて9日の午前10時から行なわれたフィギュアスケート団体の初日。その男子SPは、パトリック・チャン(アメリカ)やネイサン・チェン(アメリカ)、ミハイル・コリヤダ(ロシア)といった、有力選手が次々とミスを重ねる予想外の展開になった。

フィギュアスケート団体の男子SPで1位となった宇野昌磨フィギュアスケート団体の男子SPで1位となった宇野昌磨 その空気が連鎖したのか、最終滑走の宇野昌磨も、最初の4回転フリップで着氷を乱してステップアウトする滑り出しになった。宇野は、そのときの心境をこう振り返る。

「前の選手がミスをした影響はけっこうありましたね。特に、ネイサン選手とコリヤダ選手の演技は目の前で見ていたし、(2人が)あれだけ失敗するのは初めて見たので。『緊張感とか特別なものがあるのかな。朝早いことが影響したのかな』と、いろいろ考えてしまいました。

 自分も失敗するのかもしれないと思いながら試合に入って、最初のフリップは『ヤバイ!』と思ったんですが、何とかこらえられました。それ以降は思ったより体が動いていて、普段通りに滑れたと思います」

 宇野が「ヤバイ!」と思ったという4回転フリップは、しっかり回り切っていたものの、出来映え点(GOE)では2.86点減点されてしまう。しかしそこからは、フライングキャメルスピンをレベル4にすると、ステップはレベル3ながらエッジを効かせた粘りのある滑りを見せる。そして、「不安があった」と語った後半の4回転トーループ+3回転ループを1.86点の加点にすると、次のトリプルアクセルもきれいに決めた。

 演技終了直後、宇野は「最後のポーズは歩幅が大きすぎて転びそうになったので、早く止まらなきゃと思っていた」と苦笑い。しかし結果は、103.25点と、2位のアレクシィ・ビチェンコ(イスラエル)に14.76点の大差をつけて1位となり、10点を稼いだ。

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