羽生結弦と、宇野昌磨ら挑戦者との金メダル争いは「ミス1回の差」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by oriyama Toshimi
  • 坂本 清●撮影 photo by Sakamoto Kiyoshi

 それでも、今季苦しんできた後半の4回転トーループを克服したという自信は大きい。

「ループに関してはもっと回転した状態で降りていれば問題はなかったかなと思うので、あとは気持ちの問題ですね。フリップの場合は『絶対に』と思えば大体決まっているし。本当は両方降りなければいけないとは思うけど、最低限どちらかを成功できればいいかなと思っています。

 去年はフリップに関して練習でどれだけできなくても、試合ではできるという根拠のない自信を持っていたんです。でも今年は、フリップもループも練習では去年より跳べているのに、試合での失敗が多い。そんな失敗で少しずつ自信をなくしていたのだと思うんです。ただ、今回今シーズンで初めて課題が残らない試合ができたので、これをきっかけにして、少しでも自信を持てるようにしていきたいです」

 GP第2戦のフランス杯以降は300点台を逃している宇野だが、敗れたとはいえ今のベースを確認できる試合ができたことで、これからの方向性が見えてきた。

 そんな宇野を取り巻く世界の勢力図は、今季は不調だったボーヤン・ジンが復調してきたことでさらに戦いの激しさを増してきたといっていいだろう。ジンは今回、SPとフリーでルッツを含む3種類6本の4回転を成功させて300.95点を出してきた。彼にとって、この得点が今のベースで、五輪へ向けてはもう少し上積みしていくだろう。

 また、日本勢にとって最大の強敵になると思われるネイサン・チェン(アメリカ)は、今季GPシリーズでの最高は293.79点だが、全米選手権でルッツを跳ばない4回転3種類の構成で315.23点を獲得している。フリーでは4回転を6本にする冒険を避けて5本で来るだろうが、その時のジャンプの調子で構成を変えられる能力も持っているだけに、ルッツを入れる構成にすればもう少し得点を伸ばしてくるはずだ。

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