宇野昌磨、アドレナリン出すぎ、体動きすぎ、ジャンプ回りすぎで首位 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 SPの四季『冬』の選曲は、振付師の樋口美穂子コーチによると、宇野の母親がやってほしいと数年前から希望していたという。それを、今季やっとこの『冬』を演じられると判断した樋口コーチが振り付けたもので、陣営にとって、ある意味思い入れのあるプログラムだ。本人は「特別な思いはない」と素っ気ないが、五輪が控える大事なシーズンに勝負のプログラムができ上がったと言ってもいいだろう。このプログラムに関しては、何かをイメージして演技しているのではなく、宇野が音楽を感じたそのままを表現しているという。

「何かを表現しようかと、いろいろやってみたんですけど、僕には難しかったので、いまは自分の動きやすいように動いています。だから、僕は毎回演技が違うくらいの勢いで、気持ちに左右される表現でいいんじゃないかと思ってやっているので、本当に毎回変わると思います。それが自分のいい味だと言っていただけるように演技を磨き上げていきたいです」

 シーズン初戦だった9月のロンバルディア杯で出した自己ベストには1.25点及ばなかったが、見る者を引き込む演技を見せて、この日一番多くの観客からスタンディングオベーションを受けていた。滑り終わった瞬間は何も覚えておらず、何も頭に入ってこなかったという宇野は「アドレナリンが出すぎた」と、高い集中力を見せて演じ切り、満足のいく演技ができたと胸を張ってみせた。

「ちゃんと実力を出せればできるかな、という構成になっているのが今季のSP。いまの実力の100%はちゃんと出せたかな。でも、これ以上を目指すには、やはり練習がまだまだ足りていないです。いまの100%ではありますけど、自分が一番いいとする100%にはほど遠かったです」

 元世界王者のパトリック・チャンらを向こうに回して、余裕のSP首位スタートにも宇野に浮き足立った様子は一切ない。しっかりと地に足をつけて、自分がやるべきことが何かを把握して、大きな目標に向かってまっしぐらに突き進んでいる。

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