浅田真央を導いた佐藤信夫コーチが思う「点にならなくても大切なこと」 (3ページ目)

  • 辛仁夏●構成 text by Synn Yinha  岸本勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

 それを、今度は足を前後にして、つま先を180度に開き、片方の足をアウトサイドエッジにしてひざを曲げて、もう一方の足はインサイドエッジにしてひざを伸ばしたままで真横に滑ったものがイナバウアーとなります。イナバウアーというのはイーグルを変形させたもので、ドイツのイナ・バウアーという選手が最初にやったエレメンツです。さらに体の柔らかさを生かし、上半身を後ろに反らせたレイバック状態でやったのが、「レイバック・イナバウアー」になります。ご存知のように、トリノ五輪での荒川静香の「レイバック・イナバウアー」は見る人に強烈な印象を与えました。

 自分で言うのもなんですが、僕はイーグルを得意としていました。だけどイナバウアーはやったことがありません。イナバウアーはどちらかといえば柔軟性がある女子選手がやった技でした。僕が指導していた小塚崇彦のイーグルが、多くのファンから高く評価されて、プログラムの中に入っていることを期待してくれていたとしたら、とてもうれしいことです。もう少し柔軟性があったらもっといいのになと、思っていたものです。

 僕の言いたいことは、ほんの小さなエレメンツにすぎない動きでも、そういうふうにその場面がクローズアップされて、皆さんの印象の中に残っているわけじゃないですか。それがフィギュアスケートにとっては大切だということです。

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