浅田真央の引退に鈴木明子が想う。「あのプログラムが好きでした」 (3ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • 能登直(浅田)、是枝右恭(鈴木)●撮影 photo by Noto Sunao, Koreeda Ukyo

鈴木明子氏は「あんなにまっすぐな人はいません」と語った鈴木明子氏は「あんなにまっすぐな人はいません」と語った あんなに真っすぐな人はいません。引退会見で見せたのが、浅田真央のすべてなのです。裏がない人で、全部が表。記者から質問されて、「難しいなあ」と言いながら、一生懸命に答える。泣くのを我慢して後ろを向いたのも、彼女らしい。不器用なまでに真っすぐで、頑固です。

 休養から戻った2年間は、若い選手にとってすごい財産になったはずです。みんな、浅田真央というスケーターに憧れて、スケートを始めた子たち。真央さんと同じ氷の上に立って試合に出た経験は、何ものにも代えられません。あの背中を見て、「浅田真央のすごさ」を感じ、さらに高い目標を持てたでしょう。

 彼女が残したものは、メダルとか成績よりもはるかに大きいもの。彼女がこんなふうに輝いてくれなければ、今のフィギュアスケートはなかったでしょう。彼女ほどスケーターとしての才能と、人としての魅力を兼ね備えたアスリートはほかにはいません。彼女は歴史をつくってくれたし、競技を押し上げてくれました。

 真央さんほど期待されることのなかった私ですら、引退したあとに試合に出ることがなくなり、プレッシャーから解放された実感がありました。選手のときは特別だと思っていませんでしたが、辞めてみたら、「日常生活はこんなに追い詰められなくてもいいんだ」と思いました。

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